微睡

どろどろとした粘質の膜が体に纏わりついているようだ。私は静態しているのだというのに、目の前の景色が迫り来て、そして駆け抜けていくような感覚に陥っていた。

それは微睡に落ちる一寸前に起こる。

朝焼けのような、夕焼けのような、どちらともつかない境界線上はひどく不均衡である。眠りに打ち勝とうにも彼らに実態はなく、仄暗い眠りの底へずるずると落ちていく。どちらへ傾いたとしても、待ち構えているのは眠りの彼方である。遠い地平線のような途方もない眠り。いくら周りを見渡しても、その世界には一線の景色しかないのである。いかなる社会的制約からも逃れることができる一時的な死と言ってもよいだろう。その死の中を私は泳ぎ続ける。